女子の視線を痛いほど感じながら、私達は教室に向かった。……ああ、怖かっ
た。女子って何でこんなに嫉妬深い生き物なのだろう。私も女子だけど、こん
な風には絶対にならない。というか、なりたくないのが本音だ。
 そして、教室に入っても女子の視線を痛いほど受けることになる。……どう
してこうなった。
 だって、私の後ろに星村くんがいるんだもの。確かに、私は「ひゅうが」で、
相手は「ほしむら」だ。後ろになる確率なんて十分あるじゃない。苗字だなん
て変えることが出来ないんだから、諦めてほしい。というか、諦めて。どっち
みち1か月たてば席替えするじゃない。運がよければ前後じゃなくて隣になれ
るかもしれないのよ? それぐらい考えてほしいわ。それにどうせ近くじゃな
くても、休み時間には星村くんの机の周りに来るくせに。
「いいなー。あかりん」
「あんたも近いじゃない」
 ちなみに、美紗樹は番号的に私の隣になった。つまり、美紗樹の斜め後ろに
星村くんはいるのだ。それで十分だと思うけど。というか、変わってほしい。
頼むから。そして根本的に思うのが、何故ここまで有名な男子を私は知らなかっ
たんだ。星村くんといい――一ノ瀬くんといい。
 私は廊下側にいる金髪の少年を見る。そこには、一ノ瀬くんがいる。気配を
感じたのか、こっちを見てきた。そして、軽く手を振ってくる。
「あ、浩ちゃんだー」
 美紗樹が手を振り返している。あ、そういえば聞きそびれたことがあった。
「一ノ瀬くんと知り合い?」
「あ、うん。幼稚園の時からの幼馴染。小学校からは違ったんだけど、家族ぐ
るみで仲良かったの。中学ぐらいになると母親同士の交流ばっかりになったん
だけどね」
 今すごく納得した。道理でこの2人から同じ匂いがしたのね。
「……あかりん、今すごーく失礼なこと考えなかった?」
「気のせいだと思うけど」
「いや、絶対考えたでしょ。あたしの目を騙そうだなんて100年早いわよー」
「いいなー。涼介」
 気づくと、一ノ瀬くんが私達の席の近くに来ていた。
「みさと日向サンと近いとかうらやまー。両手に花じゃん」
「両手に花?」
 私は首を傾げる。……あれ? 私、日本語分かっているはずよね。
 さすがに両手に花っていうのはおかしい。この人の目は確実に間違ってる気
がする。気がする、じゃない。間違っている。
「確かに、日向さんも森下さんも素敵だよね」
「星村くんったら褒めるの上手ー。星村くんもかっこいいよー」
「ありがとう」
 こういった時、さらりと受け流せる美紗樹と星村くんがすごいと思う。ちな
みに美紗樹もモテる。さっきも言ったけど、顔立ちがいいのよね。……まぁ、
性格が残念なんだけどね。すごく、性格が残念なんだけどね(大事なところな
ので二回言っておきます)。
「あかりん」
「何」
「まーた変なこと考えたでしょー」
「考えてない」
「いやいや、考えたね。今絶対、『こいつ性格は残念なのにな』って思ったで
しょ」
「あら、よく分かったわね」
「えっ、そこ肯定するの!? 否定してよ!」
「否定要素がないでしょ」
 自分から言っておきながら何を言っているのやら。よく分からない。本当に
こいつはよく分からない。
「改めてこれからよろしくお願いします、っと。色々とお世話になるかもな」
「勉強でか」
「え、浩ちゃんってバカだっけ?」
「何その「バカじゃないよね? だから手伝わなくていいよね?」的なオーラ!
 ひどい!」
「一ノ瀬くんって頭いいの?」
 私は小さく首を傾げて尋ねる。その言葉に星村くんが答える。
「結構頭いいぞ」
「涼介の方が頭いいだろ」
「そうなの?」
「でも、理系だから。英語とかがダメなんだよな。だから、教えてくれるとあ
りがたいかも」
「……私、教えるの下手だけどいいの」
 そう言い、私は首を傾げた。
「別にいいよ。涼介もそこまでうまくねぇし」
「お前が言うかそれを」
 そんなやり取りをしている横で美紗樹が机に突っ伏した。……どうしたんだ
一体。
「美紗樹……」
「あざとい! なんてあざといの、日向氏は!!!!!」
「ちょっと待って、どっからツッコめばいいのか分からない。第一、私があざ
といって何よ」
「あざといもんはあざといんだよー!!!! なんだよお前ぇぇ!!!!」
「喧しいわ」
 ……まだ2年生が始まってから数時間しか経っていない。でも、これだけは
言える。……物凄く不安だ。
 こんなんで1年やっていけるのかしら。







2012.03.29








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